
ひょんなことから、辻政信の「潜行三千里」 が今年の2月に復刊されていたことを発見したのでメモ。
自分は、特攻隊員を除けば昭和史の人物に焦点を当てるような勉強の仕方はしていないので、辻政信についても断片的なイメージしかないのですが、かなり興味を引かれる人物であることには間違いありません。
なにしろ、陸軍の中では富永恭次、牟田口廉也とならんで印象があまりよろしくない人物なもので。
二・二六事件の一因とも言われる陸軍士官学校事件や、ノモンハン事件、シンガポール華僑粛清、バターン死の行進、ガダルカナル戦と、重要なシーンで捕虜の処刑や部下の戦死について責任ある立場にあったものの、終戦後は僧侶に変装して逃亡。その逃亡時の記録がこの「潜行三千里」 です。
シンガポールでは「抗日華僑」を選別する検問所で現場責任者に、「なにをぐずぐずしているのか。俺はシンガポールの人口を半分にしようと思っているのだ」と言ったと証言されていて、それが冗談か本気かはわかりませんが、辻なら本気でそう考えていたとしてもぜんぜん違和感がないところがこわい。
秦郁彦氏は「昭和史の謎を追う」で731部隊の石井四郎のことを、「軍医団の辻政信」(P.539)と表現していますが、そのくらいの人物ということなのでしょう。
この「潜行三千里」 は1950年にベストセラーとなり、その後国会議員に当選、そして東南アジア視察中に消息が途絶えて現在も不明のままとか。
ノモンハンやガダルカナルで生き残った元兵士達は、彼の戦後の足跡をどのような気持ちで眺めたのか。
他にも軍の中枢でそれなりの責任ある人物が議員になったりしている例(源田実とか)はありますが、自分たちの「責任」をどのように考えていたのか、元部下の恨み辛みはまったく耳に届かなかったのか、戦後の話でも気になるところはたくさんあります。
【4/22 追 記】
潜行三千里の内容を紹介しているサイトがあったので、これまたメモ用にリンクしておきます。
・1978年に新装されたときの紹介文と、辻千歳さん(辻政信夫人)による新装版前書き
・辻 政信の『潜行三千里』(1) バンコクの地下に潜る ~日本人納骨堂での僧侶として
・辻 政信の『潜行三千里』(2) タイ国脱出しメコン河を渡り仏印へ
・辻 政信の『潜行三千里』(3) 中国大陸での潜行へ
潜行三千里 | |
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