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戦争映画の功罪   

封切りが間近に迫った特攻隊を描いた映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」ですが、製作総指揮が、石原慎太郎というだけで、公開前から色々と批判する人がいましたね。


つい最近では、この映画について井筒和幸監督が「戦争の美化」と批判していることに対し、主演した窪塚洋介が、「この映画を見て、戦争賛美だというヤツはアホだと思う。見る前に言うヤツはアホ」と反撃していました。 (デイリースポーツ記事4/20記事(キャッシュはこちら))


これと同じように、「この映画は戦争賛美だ」「見ないで戦争美化とか言うな」という、小さなバトルがあったので、ちょっと触れておこうと思います。


このバトル(?)は、「戦争美化」と断言する映画評論家・山田和夫氏ジャーナリストの有田芳生氏の間で行われていました。


有田氏は、自身のブログ「有田芳生の『酔醒漫録』」で、山田氏を「鳥濱トメさんや特攻隊員、そしてスクリーンを見て涙する観客への最大の侮辱」と批判しました。それに対し、山田氏は「しんぶん赤旗」で「あるブログの石原映画礼賛」と反論、それにまた有田氏がブログで反論する、というものです。


上記に赤旗が出てくることからもわかるとおり、山田和夫氏は共産党員であり、有田氏もWikipediaによれば元共産党員(除名)だそうで、このお二人がどんな喧嘩していようが、別に大して興味をひく話ではないのですが(笑)、イデオロギーありきの人が「戦争映画」をどう捉えるかが垣間見えるので、ちょっと紹介しておきます。


「有田芳生の『酔醒漫録』」 特攻隊の事実と真実(5)

山田氏は、作品のなかで特攻を宣言した大西滝治郎中将の「若い諸君に死んでもらわなければならない」という台詞の次に特攻隊員が飛び立つところが気にくわないようだ。しかし、これは歴史的事実に関わる部分だ。

最初の特攻隊員の関行男大尉の苦悩は台詞にもあれば表情にも明らかである。細かいシーンでの意見はそれぞれあることだろう。問題の核心はイデオロギーで作品を評価してはいけないというところにある。

もっとも怒りを感じたのは、鳥濱トメさん反戦の気持ちを表明していないことを山田氏が厳しく批判したことだ。引用しよう。

「今回の石原映画では、トメはひたすら若い特攻兵たちをいとおしみながら、彼らを悲劇に追いやったものには口をつぐんだまま。せいぜい憲兵の乱暴に抗議するぐらいだ」。

そこで対比されるのは「ホタル」でトメさんを演じた奈良岡朋子さんだ。
奈良岡さんはシナリオにない台詞を入れることを監督に求めたそうだ。「私たちはあの若者たちを殺したんだ」という言葉だ。奈良岡さんはこの台詞を語って泣き崩れる。

鳥濱トメ
さんは娘や孫に何度も語っていたことがある。それは「わたしは何もできなかった」という自責の言葉だった。「厭戦」であり「非戦」である。これが事実だ。

山田氏は石原映画でトメさんが「私たちはあの若者たちを殺したんだ」というような激しい言葉を語らなかったことが不満なようだ。

ここでわかることは、「戦争映画は、反戦を訴えるべきである」というイデオロギーは、事実を曲げることも厭わないということです鳥濱トメさんという実在した女性が、言ってもいないことを、彼女を演じる女優によって反戦のセリフを喋らせたい、ということのようなのです。そこには、鳥濱トメさんへの敬意は微塵も感じられませんし、また、映画を見る人が、歴史の事実を知り、皆がそれぞれが考えるという行為をも否定するものでもあります。まさに、イデオロギーの押しつけなんですね。


もちろん、批判精神が前提の映画もあってしかるべきですが、歴史の事実を忠実に描こうとする映画も、同様にあってしかるべきですよね。 なのに、歴史の事実を描こう、こういう事実があったことを今の世代に知らせよう、というだけで「戦争賛美」というのは、歴史事実を知ることさえイカン!とでも言うつもりでしょうか・・・。
批判が前提の映画なら、実在した人物ではなくフィクションなり小説ベースの映画でやられたら良いと思うのですが、いかがでしょう?


過去の戦争映画のいくつかは、そのようなイデオロギー前提で作られたものが、きっとあるのでしょう。上記引用箇所にもある、かつての特攻隊を描いた映画「ホタル」では、鳥濱トメさんが発したことのない言葉を、一女優の意見で加えたりしているわけですし。


また、「本当は人道的な兵器だった人間魚雷 回天」というエントリーで紹介した、元・回天搭乗員の小灘利春さんは、昨年の映画「出口のない海」の製作に協力された時に、主役の『俺は人間魚雷という兵器があったことを、人間が兵器の一部となった悲しい事実を後世に伝えるために死ぬんだ』というセリフの修正をお願いしたそうですが、最終的に残ることになったと残念がられていました。 (私はこの映画を見ていないので、そのセリフがあったかどうかはわかりませが)


前にも「戦争について考えるということ」というエントリーで書きましたが、やはり思考停止が一番いけない。それが誰かから押しつけられたイデオロギーのままなら、なおさらだと思います。戦争映画は、その演出次第でいくらでも人を感化させられますから、それがそのまま戦争についての「知識」になってしまうと、マインドコントロールされたも同然といえるかも知れません・・・。

もちろん、戦争映画によって過去の事実にスポットが当たり、今まで何も知らなかった人が知識を得たり、興味を持ったりすることは良いことだと思います。硫黄島の激戦のことも、映画のおかげで多くの人に知られるようになったわけですし。


しかし、普段、戦争についてあまり考えたことのない人ほど、戦争映画を見る時、そして見た後は気をつけた方がよいかも知れませんね。


ところで、この「俺は、君のためにこそ死ににいく」戦争賛美だと批判した映画評論家山田和夫氏は、水上特攻兵器「震洋」の要員だったそうです。 (「震洋」は艇首に250キロ爆弾を積んだモーターボートで、敵艦に体当たりする特攻兵器。)




特攻 最後の証言
『特攻・最後の証言』制作委員会
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コメント

ホタル見ました

 イヅツ監督は、総連の傀儡ですから、知っている人は「またか・・」で済むのですが、普通の映画監督と思っている人は、騒ぐだけで宣伝効果というか、先入観の植え付け効果がありますね。
 「ホタル」は見ましたが、余り印象がありません。
 私の思考変遷は終えていた時期ではあると思いますが・・・
 ただ、韓国の場面で、妙にムカムカした記憶だけが在ります。
 とめさんの台詞も記憶がないので、そんなにインパクトは無かったのかな?

>「この映画を見て、戦争賛美だというヤツはアホだと思う。見る前に言うヤツはアホ」
・アホ!の表現はともかく、「見る前に~」は単純に正論ではないかと思います。 
 「映画を見て~」は、まだ見ていないので、評価できませんが。。。
 

「俺は君のためにこそ死ににいく」はほとんど『ああ同期の桜』と同じ内容ですね。だから石原氏は関係ないと思いますが、よく調べてもいない方にただただ批判されても嫌ですね。たしかに映画という大きな影響を与えるものだから気をつけなければいけないですが。
本なら「ホタル帰る」とか「特攻の町知覧」と同じような内容です。試写会で映画をみても戦争賛美だなんては思えません。また観に行きますが・・・
「出口のない海」たしかそんな表現は映画でも、本でもあったと思います。最後の証言でみて調べた記憶があります。

コメントありがとうございます

>tonoさん
「ホタル」は特攻隊についてある程度知っている方にはかなり不評のようですね。amazonの「ホタル」のDVDのレビューにも"怒りを覚える"とさえありますし。
tonoさんの後にコメントくださったさきさんは、「おれきみ」を試写会で見て「よかった」って言ってましたよ。

さきさん
さきさんは、「ホタル」も「おれきみ」も視聴済みでしたね。「ホタル」の感想を書いたエントリーも読ませてもらいましたよ~。やっぱりそうかって感じですね・・・。
特攻関係の本も随分読んでいますね。お薦めの本があったら、今度教えてくださいねー。

おじゃまします。
最近の戦争映画って、ちょっと物足りなさを感じることは確かにあります。何というか・・・、「思想」が入り過ぎというか。私が見たいのは、歴史をなるべく忠実に再現しているもの。例えば、「トラトラトラ」とか。あれは、真珠湾攻撃を日本側とアメリカ側がそれぞれ検証しながら作ったといいます。そこには、戦争を是か非か印象付けさせる意図を持たず、その時、日本はどう動いて、アメリカはどう動いたのか、ということ。
我々が見る歴史って、結局教科書を見ながら問題を解いているようなもの。戦争に負けたという結果、沢山の人が死んだという事実を知った上で、そこから逆算してモノを考えてる。これとってもフェアじゃないと思う。
「あの戦争は間違いだったとか」とか、後からだと何とでも言えちゃう。
あの時代は、行くも地獄、行かぬも地獄という時代だったんじゃないかと。一昔前に流行った「究極の選択」(なつかし~)みたいな。
だいたい反戦論者の論調は、下世話な例えだけれども・・・、「う○こ味のカレーか、カレー味のう○こか、どっちを選ぶか」っていう質問に、「カレー味のカレー」って答えるようなもの。こりゃーフェアじゃない。

幼い頃、爺さんが話してくれた戦争の話は、実に好戦的なものでした。その話は実に面白かった。日の丸背負って、ソ連軍に突撃した爺さんを、私は何の疑いもなく尊敬してました。それが原点ではないかと思います。
その原点のない、反戦映画は全く有害であると私は考えております。
またダラダラ書いてしまいましたが、今回の貴殿の記事、大変意義のあるテーマだと思います。

>くわっぱ上等兵さん

いつもコメントありがとうございます。

実は私は、戦争映画ってほとんど見たことがないんですよ。劇場で見たのは子供の時に見た「戦場に架ける橋」と最近の「男たちの大和」だけです。あとは、テレビでやっているのをちょっと見たくらいです。
「おれきみ」も見に行くかどうかは、まだちょっとわかりません。

映像とBGMで受ける印象は強烈ですから、「マインドコントロール」までは行かなくても、真実を知った気になる「思考停止」状態には容易に陥りそうで、ちょっと怖いんですよね。

そういう意味では、逆に「南京虐殺」関連の映画が外国で上映されることに危険を感じますね。

おっしゃるとおり、結果を知った上であれこれいうのはフェアじゃないですよね。特に戦後生まれの世代はそれを認識した方がよいと思います。
ただ、エントリーで紹介した山田和夫氏は、生き残った元特攻隊員(震洋)なんですね。航空特攻の生き残りの方でも戦後共産党に入った人は何人かいるようです。戦争中の隊内の様子などを色々調べていると、そういう人たちの気持ちもわからなくもない・・・実は、そんな気もしています。

でも、真実を知りたいという欲求が一番強い私には、事実を曲げた映画で政治利用するのは、やはり受け入れがたいですね。

この映画のタイトルについて
元特攻隊の護衛などをやってた方も見る前に
違和感があって見るのを躊躇していた話をしてます。
見た後はフィクションとしてみればよいといってます。
元特攻隊の方を取材をしてるかたもこの映画には否定的ですね。

映画は現実ではないという点で注意すべきといくらいったところで
普通、見る人がそのまま事実だと錯覚する場合が多いです。
人間は器用ではないようです。

>「あの戦争は間違いだったとか」とか、後からだと何とでも言えちゃう。
思い込みで語ってますね。
こういうこともちゃんと歴史を順番に
検証するといろいろわかるんですよ。

>FXさん

一口に「(元)特攻隊員」といっても、やはり考え方は人それぞれです。違和感を感じる人もいれば、共感する人もいます。
元特攻隊員で、戦後も航空自衛隊に入る人もいれば、共産党員になる人もいる。
本心で特攻隊員を志願した人もいれば、詐欺的手口など強制的に特攻隊員にされた人もいる。(後者が大多数でしょうが)
戦争が終わったときも、地団駄踏んで悔しがった人もいれば、「死ななくて済んだ!」とみんなで万歳三唱した回天搭乗員もいる。
「死ななくて済んだ」という安心感と「先に逝ってしまった戦友に申し訳ない」という気持ちが入り交じって、長年悩み続けた人もいる・・・。

なので、自分の主張に沿う元隊員の方を見つけて持ち出してくるのは、賛美する方も批判する方も、政治利用しているように思えてしまいます。

映画のタイトルについては、「国のため」ではなく、「君のため」になっていることは、一部の特攻隊員達には当てはまると思っています。「国のため」に特攻した人は、実質は極少数派だったように思いますから。

保守系の人は、「国のために特攻した」と思いたがる傾向がありそうですが、思ってもいなかった特攻命令を受け、逃げるに逃げられない状況で、どうやって自分の死を受け入れるかを二十歳前後の若者が必死で悩み抜いた末に、家族や恋人、故郷を守ることになると考え、自分を無理矢理納得させた・・・そういう人が多いのでは?という印象です。
そんな感じの特攻についての考察をは結構沢山エントリーを書いています。

>思い込みで語ってますね。

これは、くわっぱ上等兵さんへのコメントでしょうが、以前のエントリーと言うこともあり、ご本人が気づかぬ可能性大です。
代わりに私がコメントしますが、戦争が良いとか悪いとかそういう意味のフレーズではなく、「後からだと何とでも言えちゃう」の部分が彼のコメントの趣旨です。その一つ前のフレーズを読めば、その主旨は読み取れると思いますけど・・・。

(人の文章のツッコミ所を探す読み方をしていると、主旨を見落とすことは私もよくありますけどね。それはメディアリテラシーとのバランスで注意するようにはしていますけど。)

「戦後生まれが、戦後の価値観で後付解釈で色々講釈たれるのはいかがな物か?」という話題が何度も拙blogで話題になっているんですよ。「時代のカンニングペーパー」とか「後出しじゃんけん」とかいうたとえ話もあります。
もちろん、歴史を学び、歴史から学ぶ(教訓を得る)話とは別のことをいっていますし、開戦に至った経緯の話をしているわけでもありません。

ついでですので、Wikipediaの「歴史学」から一部引用しておきます。
「過去を今日の基準でみることは過去を色眼鏡でみることになりかねない。」
「自分の時代の価値観や倫理感を機械的に過去へ適用し、批判することは、しばしば歴史の実相を見誤ることになりかねない。」

時を経ても

最後の書き込みから4年以上経ちますが、世の中、多少なりとも良くなってますか?!

東北の震災、津波だけなまだしも、放射能汚染で、世間を混乱させています。
事実を隠そうとする輩(あえて、そう呼ばせて下さい)、踊らされる人々…。
先の大戦時と何ら変わらぬ現状だと思うのは、決して私だけではないはず。

歴史の局面で特攻だけをピックアップすると、まさしく美談ですが、それ以前の歴史的事実、すなわぢ、誰が何のために戦争を起こしたのか、国民は何故協力したのか?!という視点から考えないと、錯覚や錯誤が、歴史を再び誤らせることに結びつくと思います。

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